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習近平vsトランプの中米経済戦争はどうなる?
そもそもAIIBと一帯一路構想とは何だったのか?

中国専門ジャーナリスト福島香織が語る「チャイナリスク2017 衝撃の真実」

 習近平のスローガンでもある「中国の夢」つまり「中華民族の偉大なる復興」を実現するための地政学的戦略構想であり、中央アジアからヨーロッパ、東南アジアから南シナ海、インド洋、アフリカに至る一帯を中国の影響力下に置き、将来的に米国に対抗できる、あるいはしのぐ大国の夢を実現するための重要な布石である。

 この一帯一路構想を実現するため中国版マーシャルプランと欧米メディアから呼ばれたシルクロード基金が創られたが、それだけではとうてい足りるわけもないので、欧州勢も参加するAIIBがシルクロード基金に融資し、シルクロード基金が直接投資を行う窓口となる。AIIBとシルクロード基金については人民元決済が優先される計画で、これにより人民元の国際通貨への道も切り開く狙いだった。

 まずは民生重視を建前に交通インフラ、港湾整備などを打ち出しているが、高速鉄道・道路・鉄道や港湾整備は中国にとっての軍事利用目的もあり、原発輸出も安全保障上の意義がある。

 そう考えると、この構想は純粋に経済学的なものではなく、地政学的外交的意義も大きい。基本的には中国国内で過剰生産に悩む基礎インフラ企業の海外進出を後押しするものであるし、利益よりも政治的意義を優先させるものである。資源輸送ルートの確保や軍事的要衝(ようしょう)における米国の影響力を排除して中国の影響力を強める目的、人民元の国際化などを優先させる目的がある。あるいは金融版中国冊封(さくほう)体制[中国皇帝を頂点とし周辺諸国の支配者との間に君臣関係を結ばせた国際秩序]構築の第一歩ともいえる。

 そして、この構想とも多少リンクしているのが、人民元のSDR(特別引出権)入りである。

※新刊『赤い帝国・中国が滅びる日』重版出来記念。

 本文記事一部公開。

著者略歴

福島香織(ふくしま・かおり)

1967年、奈良県生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社大阪本社に入社。1998年上海・復旦大学に1年間語学留学。2001年に香港支局長、2002年春より2008年秋まで中国総局特派員として北京に駐在。2009年11月末に退社後、フリー記者として取材、執筆を開始する。テーマは「中国という国の内幕の解剖」。社会、文化、政治、経済など多角的な取材を通じて〝近くて遠い国の大国〟との付き合い方を考える。日経ビジネスオンラインで中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス、月刊「Hanada」誌上で「現代中国残酷物語」を連載している。TBSラジオ「荒川強啓 デイ・キャッチ!」水曜ニュースクリップにレギュラー出演中。著書に『潜入ルポ!中国の女』、『中国「反日デモ」の深層』、『現代中国悪女列伝』、『本当は日本が大好きな中国人』、『権力闘争がわかれば中国がわかる』など。最新刊『赤い帝国・中国が滅びる日』(KKベストセラーズ)が発売即重版、好評発売中。

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